介護つきホームを利用する方は、ほとんどのケースにおいて自分の気に入った選択もせず、偶然に、あるいは病院を出ていく形で、人に紹介され縁も所以もない施設に辿りついて、そこで生活するようになってしまいます。

多くの場合、重い認知症があったり、胃瘻のせいだったり入浴が自分で出来なくなったという理由で介護つきホームに行き着き、そこで最期を迎えることになります。

私たちもそういう流れで利用者の方々をお世話してきました。

この様に選択肢が少ない中で辿り着かれた施設での生活を続けるならば、認知症の方に多く見られる「帰宅願望」はあってしかるべきでしょう。往々にして自宅にいてもこの「帰宅願望」はあらわれます。帰りたいところが、若い日々の生活の場である場合などです。

しかし、わたしたちもまた、昔の自分に戻りたいと思う時があるものです。若き日の思い出は人生におけるとてもなつかしい「家」なのです。また、認知症が進行すると、本人は今はすでに亡くなった父母よりはるかに年をとっていても、まだ子供の感覚で、実の両親より、自分の子供より若いつもりでいる事があります。

このように認知症の方にとって、時系列にそった記憶というものはやがて失われていきます。そのような中で、ホームは新しい「家」としての役割を担います。私どもは、少ない選択肢であっても縁をいただいて利用者の皆様と出会うのですから、そのような皆様が、ここが「家」なのだと、感じられる瞬間があるよう、ホームの運営を心がけて参ります。

織生会 一同